やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 結局、三浦部長はクリーム色のマフラーと私がすすめたコートを買った。

 お店のロゴが印刷された買い物袋を片手に彼は私と並んで歩いている。閉館間近となった商業施設は人の姿が少なく、どこか寂しそうな雰囲気を漂わせていた。

 向かいから近づいてくる恋人らしき若い男女が手を繋いでいる。互いの指を絡め合ったその手が二人の想いも繋げているようで見ていて微笑ましい。

 と同時に何もない自分の手が心許なくなってくる。

 ちらと見遣った三浦部長の手は大きくて、当たり前だけど男の人の手で自分でも不思議なくらいその手と繋ぎたくなった。

 いや、違うっ。

 私は慌てて目を逸らす。

 どうしてそんなふうに思えたのか。私は彼が大嫌いなはずなのに。これではまるで彼のことが好きみたいではないか。