やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「じ、常務とのお話は済んだんですか?」
「ああ」

 三浦部長が首肯する。

 そこで私は彼が紙袋を持っているのに気づいた。薬局やパン屋のそれではない。紙袋に印刷されたロゴは私の手に到底届かないような高級ブランドのものだ。

 記憶の端っこにあった思い出が少し前に三浦部長と行った高級ブランドのことを想起させた。まだそんなに日が経っていないのに随分と遠い昔のことのように思える。

 年をとると日々の過ぎていくのが速く感じるって聞くけど、私そんなにババアじゃないよね?

 否定したくなるのはやむなしだ。

「君、今日が誕生日だったろう?」
「あ」

 そういえば今日は私の誕生日だ。

 自分のことなのに完全に忘れていたよ。