やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

「大野」

 一人椅子に座って自分のデスクを怒りに任せてドンドン叩いていると背後から声がかかってきた。

 私はその聞き慣れた声にはっとする。

 慌てて振り向くと武田常務と今後について話し合っていたはずの三浦部長がいた。

 彼は今まで私がやらかしていた奇行を目にして苦笑している。細められた切れ長の目がどこか痛々しいものを見るようなものになっていた。

 さて、どうしたものかといった雰囲気を滲ませて三浦部長はとりあえず場を仕切り直すかのように小さくコホンと咳払いをした。

 私は恥ずかしさで耳まで熱くしながら口を尖らせる。