やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ああん?」

 北沢副社長がこめかみをヒクリとさせた。

「なぁに人にメンチ切ってんだ? 自分の立場わかってんのかコラ」
「……」

 この会社、実は反社会的な組織がバックについてるなんてことないよね?

 まっとうな会社だよね?

 北沢副社長のガラが悪すぎて、私はついそんな心配をしてしまう。

 三浦部長が深く頭を下げた。

「会社に迷惑をかけた責任は取ります。ですから常務を責めるのはやめてください」
「そのセリフ、二言はねぇぞ」
「はい」

 部長の返事に北沢副社長が口の端を上げる。それが私にはとても邪悪なものに見えた。

 あ、駄目だ。

 このおじさんも嫌い。

 息しないで欲しい。