やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ヘマしてうちの会社に不利益を生じさせるような奴は処分されて当然だろ?」

 タヌキ、じゃなくて北沢副社長が笑みを広げながら同意を求めてくる。でっぷりとした身体を揺らしながらガハハと笑うと彼は私を指差した。

「お前さんも男を適当にあしらうくらいのことができなかったのかねぇ。そうすりゃ三浦部長も相手をぶん殴ったりしなかったろうに」
「……」

 いやらしそうに歪んだ口から発せられた暴言に私は絶句してしまう。どうしてここまで酷いことを言われなければならないんだろうと思うと同時に、そういえば副社長は決していい噂だけの人ではないんだったと思い出した。

 北沢副社長は愛嬌のあるタヌキ顔のお陰もあって良いイメージが強い。

 けれど彼は知略と策謀で副社長の地位に上り詰めたと言われている男だ。見た目に騙されてはいけない。

 ただのタヌキおじさんではないのだ。

 うん。

 今の今まで私も油断してたよ。