やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 あ、やばい。

 私、こういうシーン弱いんだよね。

 鳴きそう。

 私がドラマでも見ているような感動に浸っているとコンコンと部屋のドアがノックされた。

「失礼します」

 返事も待たずに常務の秘書が入室してくる。二十代半ばくらいの綺麗な顔立ちの女性だ。スタイルも良いしいかにもって雰囲気の人である。

 彼女は少し戸惑った様子で口を開いた。

「常務、実は……」
「はいはい、お邪魔するよ」

 秘書を押し退けるようにでっぷりとした身体の男が入ってくる。タヌキを連想させるどこか愛嬌のある顔は微笑んでいた。シリアスな雰囲気だったこの場にはそぐわないややコミカルな印象の笑い方だ。