やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 まるで自分へのプレゼントを見繕ってもらったみたいで私は嬉しくなる。だがすぐに知らない女性への贈り物だと思い出し私はがっかりした。

 いや、ちょい待て私。

 どうしてがっかりする必要がある?

 売り物のコートを私に示しながら彼が訊いてきた。

「大野はこういうのがいいだろ?」
「ええ、まあ」

 答えたものの彼の意図がわからない。

 これ、私じゃなくて別の人へのプレゼントだよね?

 私の好みで選んでいいの?

 顔もわからぬ相手への申し訳なさが立ってくる。部長が好意を抱いている相手に複雑な感情はあるがこれは結構まずいのではないかと判じた。