やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ただ、ヨツビシ側が問題にしているのはそういうことじゃないんだ。どんな理由があれ殴ったのはこっちなんだからね。相手が君にしようとしたことは未遂だけどこちらはそうじゃない。この差は大きいんだ」
「僕、いや私が軽率でした」

 三浦部長がさらに頭を低める。放っておいたらローテーブルか床に額を擦りつけてしまいそうだ。

 私はその姿に胸が締めつけられる。つんとする鼻をどうにか我慢させた。気を抜いたら目から熱いものが零れかねない。

 膝に置いた両手をぎゅっと握った。指が痛くなるくらい強く力を込める。

「拓也、頭を上げろ」

 声音は優しいのに厳しい口調で武田常務が言った。