やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ヨツビシ側は今回の一件を最大限に利用するつもりだよ。三月の新商品のことだけではない、これまでの契約についても見直しを要求する気でいる」
「……申し訳ありません」

 三浦部長が深々と頭を下げる。

 私も彼に倣った。悔しさと情けなさで感情がこみ上げてくる。

 これは私のせいだ。

 私がもっとしっかりしていればロバ(釜本)に連れ去られそうになったりしなかったのに。

「私に謝られてもね。というか君は悪くないだろ、本当に悪いのは向こうのはずなんだから」
「そ、そうですよ」

 私は顔を上げた。

「部長は私を助けようとしただけなんです。あの人、ヨツビシ工業の人が私を強引にどこかに連れて行こうとしたから……」
「うん、それはもう聞いた」

 武田常務がゆっくりとうなずく。彼は私を落ち着かせるように小さく微笑むと言葉を接いだ。