やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 ロバが呻きつつ起き上がる。三浦部長が私を庇うようにロバとの間に割って入った。心なしか部長からも威圧が放たれているように感じる。

「……」
「……ちっ」

 数秒睨み合い、ロバが舌打ちした。ロバなのに目をぎらぎらとさせている。

 三浦部長から遅れてネズミおじさんたちもやって来た。遠目から私たちを見ていたらしいネズミおじさんが悪巧みをするように目を細める。下卑た笑みがどうにも不快だ。

「釜本の馬鹿はともかくとしてぇ、三浦部長ぉ、案外君も安っぽい人間なんだねぇ」

 にやけたその顔には明らかな嘲りがあった。

「これ、高くつくよぉ」