やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 恐怖と不安がない交ぜになって私を蹂躙する。自分はこんなことになっても冷静でいられると思っていた。でも実際こうなってみると同様でうまく対処できない。私って駄目じゃん、と自覚すると涙が浮かんできた。

 ロバが私をどうしたいのか。

 その答えは聞かなくてもわかる。

 いくら私が鈍くてもさすがにこの状況に陥れば否応なく理解できる。これは鈍感とか鈍感じゃないとかは関係ない。

 ……部長。

 空いているほうの手をぎゅっと握った。

 気力を振り絞って拳を振り上げるが威圧とも呼ぶべき圧が私の勇気を萎えさせる。けれど再度気持ちを奮い立たせて私は拳を……。

「おいっ、何をしてる!」