やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「大野さんって食べるのが大好きですか?」
「……」

 わぁ、失礼な奴。

 確かに食べることは好きだけど、そんなふうに言われると私が食いしん坊みたいじゃない。

 私は自分の両手を後ろに回してぎゅうっと手の甲をつねった。痛みで沸き上がる怒りを抑え込む。そうでもしないとやってられない。

 上目遣いでロバを見つめた。

「あははぁっ、釜本さんって変なこと言うんですね。誰だって食べるのは好きなんじゃないですか?」
「ま、まあそうなんだけど。大野さんは特にそう見えたっていうか……」

 おや?

 ロバの様子がおかしいぞ。

「……ったく、すんげー可愛いじゃねぇか。こんな女持ち帰らないでいられるかよ」

 ロバが何かブツブツとつぶやくが、その声は低すぎて私にはよく聞こえない。