やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 せっかく三浦部長がいるのに今一つ楽しくない私はさてどうしようかなと考えた。

 お腹も一杯だし、そろそろ帰りたいな。

 振り返って三浦部長とポチを眺める。むすっとした表情がデフォルトの三浦部長と犬顔であまり人間らしい感じのしないポチが並ぶと何だか周囲の温度が五度くらい低くなっているような気分になる。二人が仕事に熱意を込めているのに全然熱が伝わってこない。むしろ寒くなっているような気がしてくるから不思議だ。

「大野さん」

 不意打ちみたいに声をかけられて私はビクリとする。電話が入って場を外していたロバが戻って来ていた。カレー店でビールを三杯空けている彼は若干テンションが高い。

「カレー美味しかったですね。今日はご馳走様でした」
「いえいえ」

 私は僅かに頬を引きつらせながら応じる。一応愛想良くしたつもりなのだがちゃんと出来ているのか自信はない。

 でもまあカレーが美味しかったのは同感だ。

 今度また来よう。できれば三浦部長と二人っきりで。