やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


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 宴がお開きとなってカレー店を出ると夜空にぽっかりとお月様が浮かんでいた。

 私の後ろで三浦部長がポチと話をしている。専門的な用語が飛び交っていて、よく知らない人が聞いたら宇宙人の会話と間違えてしまいそうだ。

 その解読を諦めて加藤さんのほうを見ればネズミおじさんと贔屓の野球チームについて語り合っていた。

 二人とも同じ球団のファンらしく今年こそはと息巻いている。やれピッチャーがどうのバッターがどうのと地味にうるさい。合間に挟んでくる古い選手名なんていかにもな名前でいつの時代の奴なんだとつっこみたくなる。

 でもまあ百年も昔じゃないんだろうなぁ。よくわからんけど。

 野球に対してそこまで思い入れのない私には選手の名前も野球用語も宇宙の神秘と大して変わらない。