やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ま、まゆかは渡さないからな」

 三浦部長が小声で何かつぶやいたが早口すぎて私には聞き取れない。

 でもまあ見当はつく。

 どうせ「接待なんだから食べ過ぎるなよ」とか「取引先に粗相のないようにしてくれ」とかそんな言葉だろう。

 でなければ「もっと男受けする奴を連れて来たかったなぁ」とか?

 あっ、回復どころかさらにセルフダメージが……。

 私のメンタルポイントがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 脳内に描いた棒グラフが四分の三くらい赤くなって私は低く呻いた。その声を耳聡く聞きつけたロバが声をかけてくる。

「大野さん大丈夫? ひょっとして気分悪くなっちゃった?」
「いえ、何でもないです」

 私が手を振ると彼は心配そうな表情で立ち上がった。ガタンと椅子が鳴る。