やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私が答えずにいると三浦部長が明後日の方向に目を遣りながら言った。

「すまん、変なこと訊いた」
「……」

 いや部長そこで諦めないでください。

 私、答えたかもしれないんですよ。

 というか実は大分「答える」ほうに心の天秤が傾いていたんですよ。

 あーいやいろいろ理由をつけて告らずにいようとも思いましたけど、そこは何というか、ねぇ?

 と、とにかくもうちょい頑張ってくださいよ。

 私はきゅっと拳を握った。

 よし、言おう。

 勇気がどうのとかムードがどうのとかこの際全部脇に置こう。

 言うぞ。

 言っちゃうぞ!

「あの、部長」

 とくとくとくと胸が高鳴っている。

 顔の熱さは熱病に冒されているようだ。

 喉が酷く渇いてきている。それなのに手汗も背中の汗も大洪水だ。汗の臭いとかそっちのほうに気を取られてしまいそう。

 それでも堪えろ私。

 言うぞ。