やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 またいつもの悪い癖だと彼に呆れながらとりあえずつっこむことにする。

「部長、今何て?」

 彼は私から目を逸らす。みるみるうちに顔が赤く染まった。どうやらスルーしたほうが良かったらしい。

 怒らせちゃった。

「こ、ここは暑いな。暖房が効きすぎるのかな?」
「……」

 露骨なくらい不自然な動きで三浦部長が手でぱたぱたとあおぐ。ちなみに室温はそれほど暑くない。もっと人がいたら熱気もあったかもしれないが現在ここにいるのは私と部長だけである。

 じいーっと三浦部長を見つめていると彼はコホンとわざとらしい咳払いをした。

 顔の赤みが濃くなっていく。