やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ん?」

 三浦部長の目が「まだ食べ足りないのか」と訊いてくる。

 私は耳まで熱くなった。

 穴があったら入りたい、いやいっそ壁か床をぶち抜いてでも逃げ出したい。そんな衝動をどうにか堪えて私は苦く笑んだ。最早俯こうとすら思えなかった。

 もうどこがどう恥ずかしいのかもわからない。

「まあ、腹の虫が鳴くようなら安心か。大野だものな」
「何ですかそれ」

 私は唇を尖らせた。

「まるで私が食い意地の張った女みたいじゃないですか」
「違うのか?」
「違いますよ」

 スムーズに会話を出来ているか今一つ自信はないけど、私なりにどうにか返せていると思う。

「ああ可愛い。うどんじゃなくてまゆかを食べたい」
「はい?」

 三浦部長が小声で何かをつぶやいたのだが、早口だったので私はうまく聞き取れなかった。