やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 自分の恋愛経験の乏しさが情けない。

 ううっ、恋愛上級者だったらこんなのどうってことないのに。

 なぜ経験値を貯められなかった私。

 再びテーブルに顔を伏せて「うーん」と唸る。思いの外その声が大きく響いて内心焦った。会議中にお腹が空いて「きゅるるぅ」と鳴るより恥ずかしい。

 いや、会議中に……のほうが恥ずかしいかな?

 連想するようにどれが恥ずかしいかあれこれ考えていると少しだけ気が紛れた。もっとも気が紛れなかったとしてもいずれ第二事業部に戻らなくてはならないのだが。

「大野」

 背後からかけられた声に私はビクリとする。即座に早鐘と化した胸の鼓動に焦りを抱きつつ私は身を起こして振り向いた。