やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「心配してくれてありがとう」

 私はにっこり微笑んだ。

 中森さんが「だから違うって」と言って私から身を退く。その顔は明らかに赤くて照れているのが丸わかりだ。

「けど私、他に好きな人がいるから」
「……それって」

 中森さんの表情が一気に険しくなった。彼女が誰の顔を思い浮かべたのかは容易に想像できる。

 私は静かに首を振った。

「新村くんじゃないよ。あのね、私は三浦部長が好きなの」
「えっ?」

 中森さんが目を見開く。彼女の頭の上は蛇から茶髪へと戻っていた。きっと蛇だったらそろってギョッとしていただろう。

 とそこで私ははっとした。

 あれ?

 ちょい待って。

 私、今何て言った?

 中森さんに心配してもらって、嬉しくなって、雰囲気に流されて何て言った?

「……」

 私は両手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。

 顔が熱い。どうしようもなく顔が熱い。

 わぁ。

 やっちゃった!