やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 私は組んでいた手に力を込めた。

 ぎゅうっと組んだ手は爪が食い込んでいてちょい痛い。でもそれくらいしないと私の煩悩は鎮まりそうになかった。

「相手の人、北沢さんよね? 確か去年地方に飛ばされた」
「……っ!」

 私は驚きのあまり一歩後退りしかけてコツンと高等部を壁にぶつけた。やばい、そういえば壁ドンされてたんだった。

 中森さんがにやりとする。心なしか頭の上の蛇たちもニヤニヤしているような気がした。

「やっぱりそうなのね。考えてみると北沢さんって地方に移る前はここの第二事業部にいた訳だし、あんたと知り合いでもおかしくないのよね」
「……」

 き、北沢さんの情報もばっちりなんだ。

 中森さん、経理じゃなくてそっち系のお仕事のほうが向いてるのでは?