やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ぼぼぼ僕は君のことが……」
「失礼しまーすっ!」

 三浦部長が声をどもらせていると聞き慣れた声が割り込んできた。

 中森さんだ。

 振り返った私と目が合うと彼女はつかつかと歩み寄ってきた。小脇に大判のバインダーを抱えていて、それで殴られたらとても痛そうだとか思ってしまう。

 あれ?

 中森さんの茶髪、うねうねの蛇になってない?

「三浦部長、これうちの課長からです」

 彼女はバインダーを両手で持ち直すと三浦部長に差し出した。

「あ、ああ。ご苦労様」

 やや戸惑い気味に応えて三浦部長が受け取る。彼はバインダーを広げて中の書類を確認するとパタンと閉じた。