やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 翌日。

 立春を迎えたというのに空気は全然春らしくなかった。

 昨日のフルーツロールを朝食に摂ると安物の薄いコートに身を包んでアパートを出る。凜とした空気に自然と気が引き締まった。

 吐く息が白い。

 そして肌を刺すように北風が冷たい。

 寒さに身を震わせながら駅に向かった。ホームに滑り込んできた電車に寒さから逃れるように乗車し満員電車の息苦しさを覚えつつ寒さから一時避難できたことにほっとする。

 車窓越しに流れていく街並みを眺めた。

 色彩の淡い家屋やビルに挟まれるようにぽっかりと公園の緑が見える。遠くにはパチンコ屋の大きな看板。