やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「それと俺のいない間におかしな男に引っかかるなよ。男なんてどいつもこいつもみんな狼なんだからな」
「……」

 じゃあ先輩も狼なんですね。

 とはさすがに言えず。

 喉まで出かかったのは内緒だ。

 改札で私たちは別れた。

 北沢さんは片手を振って駅の奥へと向かう私を見送ってくれた。

「あいつ自覚ない上に隙が多いからな。俺が留守しているうちに……なんて勘弁だぜ」

 一度私が振り返ったときに北沢さんが何かをつぶやいていたみたいだけどその内容まではわからなかった。

 ま、いっか。

 先輩、福岡でも頑張ってくださいね。

 無言でエールを贈ると私はホームへと続く階段を上り始めるのであった。