やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「まあ明日も早いしまた今度でいいか」
「いやそれも遠慮したいんですけど」
「ははは、まゆかは遠慮深いなぁ」

 北沢さんは心底愉快そうに笑って私の頭を手でポンポンと叩いた。まるで小さな子供のような扱いなのになぜか嫌ではない私がいて自分でもびっくりしてしまう。

 耳まで熱くなっていくのを覚えながら私は唇をつんとさせた。

 北沢さんが少しだけ真面目な表情をする。キリッとしたイケメンの顔はなかなかに素敵である。これが三浦部長ならご飯三杯はいける。

「俺は明日朝イチの便で福岡に戻る。しばらく会えなくなるけど泣いて寂しがるなよ」
「あのー、泣いたりなんかしませんよ」
「そこは泣いていい。むしろ泣け」
「……」

 先輩、無茶苦茶です。

 まあいい、と北沢さんは言って一つ息をすると言葉を接いだ。