やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ああいう奴からこいつを守ってやらないとな。そのためにも早く本社勤務に戻らないと」
「ん? 今何て?」

 よく聞こえなかったので尋ねると北沢さんは曖昧に笑った。

「いや苦手なタイプを前にしたまゆかの顔も捨て難いと思ってな」
「ええっ、それ地味に馬鹿にしてませんか?」
「いやいや、むしろ褒めてるつもりだぞ。お前はどんな表情でも可愛いってな」
「むう」

 私は唇を尖らせた。

 先輩、やっぱり馬鹿にしてますよね?

 *

 食事を終えると私たちは店を出た。

 幸いなことにネズミおじさんとまた顔を合わせることもなかったので私はかなりほっとしている。