やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「ひょっとしてああいう人苦手か?」
「んっ」

 びくりとして危うく咽せそうになる。

 何とか口の中のものを飲み込むと私は目に抗議の意を込めて北沢さんを睨んだ。

 眉をハの字にして北沢さんが苦笑いする。彼はスプーンでカレー皿の淵をコツコツと叩いた。その音が「あー悪い悪い」と謝っているふうにも聞こえる。

「いや何かまゆかが嫌そうにしていたからさ。お前すっげぇ顔してたぞ」
「……」

 え?

 私、そんなにすごい顔してた?

 自分では気をつけていたつもりなんだけど。

 北沢さんは私の動揺を読み取ったのか口の端を少し上げた。二重瞼の目を細めさも愉快そうに肩を揺らす。