やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 じゃあまた今度ねぇ、と友だちに接するような軽い言葉を残してネズミおじさんは奥へと進んでいった。

 パーテーションの向こうに彼が消えると私は心の底からほっとしてはあっと深いため息をつく。またネズミおじさんに絡まれたくないのでさっさと食事を済ませてしまおうとスプーンを手に取った。

 それにしてもすごい偶然だなぁ。

 あと私のこと憶えてなかったみたいで良かった。

 もしあの電車でのこと憶えていたら今ごろどうなっていたか。

 まあ、酔っ払ったネズミおじさんに絡まれていたのは中森さんだし私は大したことしてないんだけどね。

 うん、大丈夫大丈夫。

 ……大丈夫、だよね?

 不安がなくはないけどとりあえずは無事に乗り切ったと安堵を重ねる。スプーンでカレーを一口食べると北沢さんが訊いてきた。