やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「福西部長、彼女は私の後輩の大野です」

 北沢さんが片手で示しつつ私を紹介した。まるで英文を直訳したような紹介に少しだけ気が紛れる。

 私は短く息を吸って一息に挨拶した。

「カドベニ本社第二事業部企画営業の大野です」

 慌てて名刺を取り出してネズミおじさんに差し出した。私的にもぎこちない上にやや雑な渡し方だったと思う。作法にうるさい人なら眉をひそめるかもしれない。

 でもビジネスマナー的にアレかもしれないがこっちは余裕がないのだ。目をつぶってもらうしかない。

 てか、相手はネズミおじさんだし。

 それにしてもヨツビシの部長さんかぁ。

 人は見かけによらないなぁ。