やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

「……」

 絞られた照明の明かりが店内をムーディーにしている。一目でインドを連想させる内装の店は先日武田常務と一緒に飲んだ焼き鳥屋の近くにあるカレー店だった。

 ホールにはいくつかのテーブル席がありパーテーションの奥にもテーブルがあるようだ。

 窓際の二人席に私と北沢さんは座っている。肩を露出させた制服に身を包んだ女性店員に案内されて着いたのがこの席だった。

 さして迷うことなく注文したチキンカレーのセットは突然のお誘いにまだ戸惑っていた私が冷静さを取り戻す前に運ばれて来た。真っ白いカレー皿にこんもりとご飯が盛られている。鈍い銀色の鍋には黄土色のカレー。まるで衛星のように付け合わせの福神漬けとラッキョウの皿がカレー皿の横に並んでいた。

 カレーとご飯の量は思っていたより多い。