やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 ちょい懐かしくなっていると北沢さんの声が降ってきた。

「この後暇か?」
「あ、えっと」

 私はちらと北沢さんを見てから中空に視線を移した。

「い、一応暇ですけど」
「なら飯に行こう」
「え?」

 北沢さんが私の腕を掴む。強すぎずそれでいて簡単には外せそうにない絶妙な力加減だ。しかも痛くない。

「さっき秘書課の奴から美味い店を教えてもらったんだ。一人で食ってもつまらないからな。付き合ってくれ」
「……」

 わぁ先輩。

 ちょっと強引じゃないですか?