やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 いつも利用するコンビニのカレー弁当も美味しいのだけれどアパートから少し離れた別のコンビニのチキンカレーもなかなかに捨て難い。会社の最寄り駅の裏手にあるコンビニのカレー丼も私は好きだ。

 会社の一階に着く頃になっても三社の戦いは続いていた。

 もういっそ全部食べようかと思ったとき、近くから声がかかった。

「まゆか、今帰りか?」

 その耳心地の良い声に意識が引っぱられると、少し前に会った顔が微笑んでいた。

「先輩」
「奇遇だな、俺も今帰るところだ」

 北沢さんが私の横に並ぶ。再会したときには気づかなかった匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。この香ばしい匂いはコーヒーのものだ。

 たぶん直前にどこかで飲んだのだろう。

 そういや先輩ってコーヒーが好きだったんだよね。

 前はよく先輩のおすすめの店に連れて行ってもらったなぁ。