やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 どこか様子のおかしい三浦部長に私は首を傾げる。

 私がいなかった間に何かあったのかな。

「あの部長、どうかしたんですか?」
「ん? ああその何だ……」

 彼が言い淀んでいると電話が鳴った。デスクの上の固定電話だ。内線を報せる電子音が二回鳴り終える前に営業事務の子が応答した。

 すぐに三浦部長に声がかかる。

「部長、武田常務から二番です」
「わかった」

 彼はうなずいて固定電話のボタンを押す。

「はい、はい」と応える部長を見ながら私は話しが終わるのを待った。

 やりとりは一分とかからなかったと思う。

 彼は最後に「わかりました」と言って受話器を置いた。

 はぁっと息をついて立ち上がる。