やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 集中しているのか私の存在に気づかない彼に声をかけた。

「新村くん」
「……うん?」

 私の声に反応して新村くんの肩がぴくんと跳ねる。

 手を止め、彼は私に振り向いた。

「あ、大野さん」
「えっと、ごめんね。仕事の邪魔して」

 苦笑しつつ私がそう言うと彼は首を振った。

「邪魔だなんてとんでもない。俺こそすぐに気づかなくてごめん。せっかく大野さんのほうから来てくれたのに」

 ううん、と返しながら私はフルーツロールの入ったレジ袋を見せた。

「これ良かったら食べて」
「えっ、大野さんが俺に差し入れ?」