やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 開いたエレベーターのドアの中に北沢さんが入る。くるりと私に向き直ると彼は片手を上げた。

「じゃあ、またな」
「はい」

 ドアが閉まる。

「そうだよな。あいつがいるんだから早く本社に戻らないとな」

 閉じたエレベーターの奥で北沢さんが何か言ったみたいだけど私にはよく聞こえなかった。

 *

 人事課に優子さんの姿はなく、代わりに新村くんを見つけた。

 私は整頓されたデスクでPCのキーを叩く彼に歩み寄る。

 真剣な表情で仕事に打ち込む彼は何だかとても素敵だ。

 まあイケメンな訳だしそのままでも十分格好いいのだけれど、その割合が何倍にも増していた。彼に心惹かれる女子社員の気持ちもわからなくもない。

 ま、私には三浦部長がいるんだけど。

 新村くん、ごめんね。