やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 抗議を込めて私は彼を睨んだ。

 臆する様子もなくむしろ挑発的な笑みを浮かべて北沢さんは見返してくる。彼のこういう表情は何となく策略家めいていてちょっと油断ならない。

「……」

 ん?

 そういや、先輩も副社長と同じ「北沢」だ。

 今は本社勤務ではなく地方勤務だし。

 まさか、北沢さんが副社長ジュニア?

 あーでも顔はイケメンでタヌキじゃないか。

 体格だって全然違うし副社長に似てないよね。

 それに北沢さんが副社長ジュニアだったら私でもわかるはず……根拠はないけど。

 うん、気のせい気のせい。

 私がそう思っているとおどけた調子の質問が飛んできた。