やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 北沢さんは私より二つ上の先輩だ。営業のいろはは彼から学んだと言っていい。チャラい印象の強い人だけど頼りになるしとっても良い人だ。

 でも去年の春の異動で福岡支社に移ったはず。

 どうしてここに?

 訊いてみた。

「あれ、北沢さんって福岡に飛ばされたんじゃなかったんですか?」
「あはは、飛ばされたはないだろ」

 ノリがとても軽い。生きてて楽しそうで何よりである。

「ちょいと野暮用があってな。あとまゆかの顔も見たかったし」
「……」

 色気のある声でそう囁かれ、つい私は顔に熱が集まる。

 こういうところが駄目なんですよ、先輩。

 他の子だったら誤解しちゃいますよ。