やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 空になった手を所在なげにぶらぶらさせつつ三浦部長が言った。

「もうじき終業時刻だからな、下見のこと忘れるなよ」
「はい」

 それはわかってます。

 チキンカレー……じゃなくて三浦部長との食事が待っていますものね。

 うん、まだ食べてないフルーツロールは明日でいいや。味は落ちるけど。

「もし優子がいなければその場にいる人事課の誰かに適当に渡しておいてくれ。優子を探したり帰りを待ったりしなくていいぞ」
「わかりました」

 つまり、どうしても優子さんに渡したいという訳ではなくどちらかというと在庫処分的な感じなのだろう。

 私としても時間をかけたくなかったので異論はない。