やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない


 *

「大野、ちょっといいか」

 終業時刻まであと三十分というところで私は三浦部長に呼ばれた。

 何だろうという疑問半分、もしかしたら終業後のデート(実際は接待の下見)の確認かなという期待半分で彼のデスクに赴く。

 以前のような重い足どりはもうない。とても軽やかだ。美味しいチキンカレーも楽しみだし。

 私がデスクまで行くと三浦部長はずいとレジ袋を差し出した。

 あ、これフルーツロールの余りだ。

「悪いがこれを優子のところに持って行ってくれないか」

 三浦部長の表情は硬い。

 というか恥ずかしがってる?

 ほんのりと顔が赤いんですけど。

 ああ、そういやさっき優子さんに怒ったばかりだもんね。

 ばつが悪いよね。