やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「さ、戻りますよ。たんまりと仕事が残ってるんですからね。遊ぶ暇があったらキリキリ働いてください」
「待って、せめて年の数だけ豆を食べさせて」
「早見さんがそれやったらお腹壊しますよ。何粒食べることになると思ってるんですか」
「私、そんなにババアじゃないもん!」
「はいはい、そうですね。早見さんは若い若い」
「ひどっ、何その微塵も心のこもってない返事!」

 新村くんに引きずられるようにして優子さんは第二事業部を後にした。

 三浦部長のデスクのまわりにはまだ優子さんによって撒かれた豆が転がっており、彼女の襲撃が現実にあったことだと物語っている。

 デスクについた部長が心底疲れたようにわあっとため息を吐いた。

 うんざりした口調のつぶやきが漏れる。

「この会社、本当に懐が深いなぁ」
「……」

 私もそう思います。