やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「まさか本当に豆撒きしに来ただけだなんてことないよな?」
「あ、えっとね」

 優子さんが三浦部長の視線から逃れるように顔を背ける。その仕草が憂いを帯びているようでちょっと色っぽい。

 三浦部長の口角が一段下がった。

「何だ? はっきり言え」
「いや、だってほら去年もやった訳だし。こういうのは毎年続けて恒例行事にするのが正しい日本の在り方だと思わない?」

 うわっ、マジで言ってるのこの人。

 やっぱり滅茶苦茶だ。

 というか、今さらだけどこんな人が人事課の課長だなんてうちの会社大丈夫かな?

 そりゃまあ、仕事の面では有能かもしれないけど。

 三浦部長が目を閉じてはあっと息をついた。それこそ肺の空気を全部吐き出してしまうのではないかというくらい盛大なため息だ。

「君を見てるとつくづくこの会社の懐の深さを思い知らされるよ」
「……」

 あ、そういう捉え方もあるんだ。