やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 あれの意味がわからず私はこてんと首を傾げる。

 その態度が気に入らないのか三浦部長の顔の赤みがますます濃くなった。

 うーん、どうしたもんかなぁ。

 私が思案していると彼は言葉を接いだ。

「終業後の件なんだが……」
「鬼はぁ外ぉっ!」

 いきなり誰かが叫びながら第二事業部に飛び込んで来た。驚いた私がそちらへ目を向けるとコンビニで売られている豆撒きの袋を持った優子さんが走りつつ豆を投げようとしている。

 え?

 再び優子さんが叫ぶ。

「鬼はぁ外ぉっ!」

 ぶんという音を響かせそうな勢いで優子さんが豆を撒く。至近距離からの攻撃は私ではなく三浦部長に向けられたものだった。