やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 聞き返すべきかと迷っていると彼が言った。

「実はみんなにと買ったフルーツロールが余ってしまってね、良かったらもらってくれないか?」

 彼はデスクの片隅を手で示す。そこにあるのは昼前に第二事業部の部員に配られたフルーツロールのレジ袋で恵方巻と一緒に用意されたものだった。

 恵方巻のレジ袋がないところを見るとそちらは全て配り終えたのだろう。

 うーん、私としては恵方巻のほうが良かったなぁ。

 フルーツロールならまだ食べてないのがあるし。

「ええっと残りの分はお持ち帰りにしたらどうですか? 冷蔵保存にすれば明日でも食べられると思いますよ。まあ、味は落ちるかもですが」
「いや、どうせお持ち帰りするならまゆかがいい」
「は?」

 早口に言われた言葉はちゃんと聞こえなかった。

 どうせ……何?