やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 手招きする姿勢のまま三浦部長が口角を下げていく。何だか秒単位でご機嫌メーターも下がっているみたいだった。

「大野」

 とうとう声で呼ばれた。

 よくわからないけど無視はできそうにない。

 私、何したんだろ?

 頭の上に疑問符が沢山浮かんで何個か零れ落ちる。

 とにかく立ち上がって三浦部長のデスクへと向かう。彼と話しができて嬉しいとかそんな浮ついた考えはなかった。叱責の原因に全く心当たりがなくてそのことで頭は一杯だった。

 デスクの傍で立ち止まると私は尋ねた。

「部長、何ですか」
「うん、すっごい可愛い。癒される」
「はい?」

 三浦部長の声は小さすぎて私には聞き取れない。