やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 仕事に没頭している間に三浦部長が午後の会議を終えて第二事業部に戻って来ていた。

 ふと手を止めて彼のデスクに目を遣るとむすっとしたいつもの表情があった。

 食べかけのフルーツロールを片手にPCの画面を睨んでいる。真剣そのものの顔は通常の五割増しで怖い。

 きっとこの場に五歳児の子供がいたら泣くだろう。というか絶対に泣く。わんわん泣く。

 この会社が子供服とか玩具のメーカーじゃなくて本当に良かった、なんて思ってしまった。

 うん、とてもじゃないけど部長に似合わない。

 部内には私と三浦部長の他に誰もいなかった。営業事務の子たちは私に電話番を任せると揃って休憩に入ってしまっている。外回り組も午後から出て行ったきり帰って来ていない。