やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 彼の呼びかけにその場にいた全員が三浦部長を見た。部下の注目を浴びた彼はコホンと咳払いをして二袋あるレジ袋を持ち上げた。

「去年を憶えている者はわかってると思うが今年も恵方巻を用意した。食べられる者は食べてくれ。あと去年の反省でフルーツロールも買ってみた。こちらは好き嫌いやアレルギーで恵方巻がダメという人向けだ。」

 ほぼ一斉に部員たちが歓声を上げる。

「部長、ナイスタイミング!」
「ちょうどお腹が空いてきたんだよね」
「恵方巻って去年と同じ店の奴かな」
「部長太っ腹」
「ゴチになりますぅ!」
「お返しにバレンタインではあたしをプレゼントしますね」

 ちょい待って。

 最後の人、何気にとんでもないこと言ってなかった?

 油断できないんですけど。