やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 「わ、私、朝イチで提出しないとまずい書類があるんで失礼します」
「あ、あぁ」

 急にばつが悪い気がして私は急ぎ足で階段を駆け上がった。

「そうだよなぁ、やっぱり仕事だから付き合ってくれるんだよなぁ。変に期待したら気持ち悪がられるよなぁ」

 一人踊り場に残された三浦部長の声は私には届かなかった。

 *

 そろそろお昼になろうかという時間に外に出ていた三浦部長が第二事業部のフロアに戻って来た。

 ノートPCの画面とにらめっこしながら取引先と電話をしていた私はちらと三浦部長を見遣る。両手に大きなレジ袋を持った彼は自分のデスクまで進むとどさりとレジ袋を置いた。

 立ったままパンパンと手を叩く。

「みんな、ちょっと手を止めてくれ」