やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

「この前武田常務と焼き鳥屋で飲んだだろ」
「はい」

 あの店は当たりだった。

「実はあの近くにチキンカレーの美味い店があるんだ。カレー好きの人向けの接待で利用したいんだが僕もどんな感じの店かわからなくてね。悪いが下見を付き合ってくれないか?」
「……」

 ワォ。

 朝っぱらから食事のお誘いですか?

 じゃなくて。

 あ、うん。わかってるわかってる。

 これ仕事だよね。

 けど、ちょっと……いやかなり嬉しい。

「大野?」

 返事をしなかった私に三浦部長が訝しそうな視線を投げてくる。顔に赤みがあるのは私がすぐに返答せずにいたことに怒ったのだろう。