やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 今年の節分は二月二日だ。

 節分の朝は今シーズンで一番の冷え込みとなった。

 暦の上とはいえ明日から春だとはとても思えない寒さに身を震えさせつつ私はアパートを出る。

 手持ちの中で最も暖かい服装にしたかったけれどあまりにも仕事向きにならなかったので諦めていつも通りの格好にしていた。

 そういや前に三浦部長と買い物に行ったときに見たブランド物のコートとマフラーは暖かそうだったなぁ。

 あれ、三浦部長の想い人への誕生日プレゼントなんだよね。

 いいなぁ。

 いつものように老齢の守衛さんに挨拶して社屋へと入る。ガラス張りの自動ドアをくぐっただけなのに天国か極楽かと疑いたくなるほどの暖かさが私を包んだ。思わずふうっと息をつく。