やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

 あちこちから私たち三人をネタにした噂話がひそひそと漏れ聞こえる。視界の端で秘書課の子と人事課の子が下卑た顔で何かを話していた。

 ああこれ優子さんの襲来確定だ、と私は内心げんなりする。

 せめてこちらの手が空いてるときに来てほしいなぁ。

 新村くんがちらと中森さんに目を遣ってから私に訊いてきた。

「大野さんって聖子と知り合いだっけ?」
「あ、えーと」

 なかなかに答え辛い問いに私は苦笑する。

 とはいえ昨日のあれはギャラリーもいたしなぁ。

 きっと、いや絶対に社内に広まってるよね。

「あ、あのね」

 ちょっと慌てた感じで中森さんが間に割って入ってきた。

 本人的にも昨日のことを隠しておきたいのだろう。

 ま、無理だと思うけど。